岡山大学で同僚であった前田芳男先生が、最終赴任先である九州東海大学にて最終講義をされるとのご案内をいただきました。
そこでこの機会を利用し、1月17日から二泊三日の日程で、まずは「五木の子守唄」で有名な熊本県五木村を訪ね、その後、熊本市へ回り、最終講義の拝聴を兼ねて、「火の国」「水の国」熊本を巡る紀行へと出かけました。


五木村は、九州内陸部で最も人口の少ない自治体で、現在の人口はおよそ800人ほどです。
全国的には、川辺川ダム建設計画が、地域コミュニティに大きな影響を及ぼしたことで知られています。
当初のダム建設計画では、梅雨や台風時の大雨の際に洪水を防ぐこと、渇水期には河川環境を守りつつ水量を補うこと、さらに、農業用水の安定供給によって地域農業の基盤を強化することなど、いくつもの目的が掲げられていました。
加えて、水力発電によるクリーンエネルギーの供給も計画されており、地域振興と環境保全の両立を目指す壮大な構想でもありました。
一方で、この計画は賛否両論を巻き起こし、結果として五木村は、長年にわたり、大きな選択と葛藤の中に置かれることとなりました。
そうした歴史を背負いながら、五木村では現在、道の駅「子守唄の里五木」を拠点に、やまうにとうふや鰻を名物とした「五木久領庵」、村役場や歴史文化施設「ヒストリアテラス五木谷」、温泉施設「五木温泉夢唄」など、創意工夫に満ちた地域創生の取り組みが展開されていました。












現在お手伝いを進めている岡山県新庄村ともご縁が深いことから、子育て、買い物、医療・介護、モビリティ、観光、特産品開発など、さまざまな分野について、あちらこちらでお話を伺わせていただきました。
また、滋味あふれる地元食材のお料理や、山あいに湧く温泉にもゆっくりと浸かり、山深い村ならではの静けさと温もりを、心ゆくまで味わうことができました。
特に、一泊させていただいた民宿「山里」の女将さんからは、これまでの村の歩みや、これからの課題、そして何とかしたいという想いまで、胸に迫るようなお話をじっくりと伺うことができました。
まさに、大いなる学びをいただいた五木村訪問でした。



翌18日は、朝食をいただいてから民宿を後にし、村内をゆっくりと巡らせていただきました。
このあたりは平家の落人伝説の地でもあり、史跡の数々を訪ね歩きました。
五家荘平家緒方家では、平清盛の座像が静かに迎えてくれ、遠い歴史が、ふっと身近に感じられるような不思議な感覚に包まれました。
私の故郷・四国の祖谷渓にも同様の伝承が残っており、日本の山里に共通する物語の深さを、あらためて思わされました。
さらに、長さ116メートルを誇る「梅の木轟公園吊橋」では、谷底が見えないほどの深い渓谷に足がすくみながらも、この地に生きてきた人々の歴史の重みを、肌で感じる思いがしました。
阿蘇を抱く熊本は「火の国」として知られていますが、同時に、豊かな湧水に恵まれた「水の国」でもあります。
その清らかな水を生かした石橋の数々も見学し、自然と人の営みが織りなす風景の美しさに、しばし心を奪われました。
熊本という土地の奥行きと、五木村の静かな力強さを、ゆっくりと感じ取ることのできた一日でした。



■関連リンク
川辺川ダムの目的 | ダム事業 | 国土交通省 九州地方整備局 川辺川ダム砂防事務所
