67歳からの手習い

2026年6月、京都大学経営管理大学院の客員教授としてお迎え頂きました。そして、10月1日から始まる後期授業のお手伝いなど、新たなスタートに向けた準備のため、京都へ出向いています。

学び直し、教え直し。そして、書籍や資料も引っ越して、研究活動を再開いたします。

まさに67歳からの手習いです。

東京での金融やモビリティ分野の調査研究の経験と成果、愛知での大学教育と地域との関わりで得たコミュニティ政策の知見、岡山大学や九州大学での教育・研究と地域の皆さまとの実践知の習得。そして、再び東京を舞台にして、政策研究大学院大学で始まった社会インフラや地域の将来を考える取り組み。振り返れば、それぞれの場所で仕事を頂き、多くの先人や若い学生たちから教わり、多くのご縁に支えられて参りました。

その一つひとつを整理しながら京都へ持ち寄り、これまでの仕事の集大成につなげたいと思っています。とは申せ、先が見えない時代です。あれこれと思案しながらも、行く雲と賀茂の流れに任せてみる。私の流儀である「行雲流水」を旨に、京都での新しい一頁を、残された時間、自由に書き加えて参るつもりです。

 

この日は、京都駅から地下鉄烏丸線に乗り、同志社大学の最寄り駅である今出川駅まで参りました。ここから今出川通を東へ、京都大学まで歩きます。

右手には、京都御所を抱く京都御苑の緑。左手には、同志社大学や同志社女子大学のキャンパスが続きます。御苑の落ち着いた佇まいと、大学のある街の若々しさ。今出川通は、その両方を感じながら歩ける道です。

歴史を重ねてきた街で、毎年、新しい学生たちが学び始める。67歳で新たな準備を進める私も、その仲間に少しだけ入れて頂くような、ワクワク、ドキドキの気持ちになっています。

河原町通を越え、賀茂大橋へ。建物の続く通りから、川のある風景へと視界が開けます。

橋の北側は、賀茂川と高野川が出合う場所。二つの川に挟まれた出町の三角州は、出町柳を代表する風景の一つです。別々のところから流れてきた川が、ここで出合い、鴨川となって京都の街を南へ流れてゆきます。

東京、愛知、岡山、九州で重ねてきた経験や、人とのご縁も、京都でどのようにつながってゆくのか、どんな新たなご縁を頂けるか、そんなことを考えると、これからの手習いが楽しみです。

橋を渡れば出町柳。京阪電車と叡山電車がつながり、街なかへ向かう人、洛北へ出かける人、大学へ通う人が行き交う場所です。観光地としての京都と、日々の暮らしの京都が、自然に重なっています。

さらに今出川通を東へ進むと、百万遍です。

大学の周りには古い町並みも残り、そこに食堂や喫茶店、古本屋があり、学生たちの暮らしがあります。研究室で疲れた頭を、熱い珈琲でほぐす風景、そんな時間や空間も含めて、大学のある街の文化を感じさせてくれます。観光都市京都とは一味違う、学生町としての京都の風情やひとときを、これから少しずつ味わいたいと思います。

百万遍の交差点から、京都大学吉田キャンパスの本部構内へ。時計台で知られるこの構内に、私が新たに通う研究の拠点となる総合研究2号館があります。その3階に担当する経営管理大学院経営研究センターがあります。そして、12号室を、恩師である川北英隆先生(京都大学名誉教授)と一緒に使わせて頂けることになりました。

京都大学で博士論文に取り組んだ頃からの学びを、今度は長年の現場経験とともに深め直します。この年齢になっても、恩師のそばで学び、相談できる場所を頂けることは、何とも心強く、ありがたい限りです。担当の職員の方にもお力添えを頂けるとのことで、研究と教育に向き合う環境を整えて頂きました。

この日は2時間ほど、後期の授業内容と、これからの研究計画について打ち合わせをさせて頂きました。

私の仕事の出発点には、東京で携わった金融業界との関係、そこでも労働金庫はじめ協同組織金融の業務や調査研究があります。働く人の暮らしや中小企業の経営を金融がどのように支えるのか。協同組織の金融機関は、誰のために、何を大切にして経営するのか。その後の金融に関する出版や調査研究の仕事も含め、実務のなかで頂いた問いは、今も私の研究の根にあります。あらに、東京では、金融界や霞が関、研究者の皆さまとのご縁に加えて、トヨタ自動車の研究所への転職や日本商工会会議所への出向経験から、多くの研究者や実務家とのご縁にも恵まれました。こうした長いお付き合いのなかで、時代の変化をどう読み、次の一手をどう考えるか。年月を経ても本音で意見を交わせる友人や先輩方の存在は、私にとって大切な財産です。

同じく愛知では、愛知学泉大学での教育・研究を通じて、学生とともに地域へ出向き、現場で学ぶ経験を重ねました。自動車産業をはじめとする企業の皆さま、地域の暮らしを支える皆さまとの交流は、産業と地域社会、人の移動と暮らしを結び付けて考える機会となりました。教室で学んだことを現場で確かめ、現場で生まれた疑問を大学へ持ち帰る。その往復の大切さを、学生たちと一緒に学ばせて頂きました。

そして岡山大学では、大学が地域とともに何をなし得るのかを問い続けて参りました。

自治体の総合計画づくり、地域産業の振興、公共交通、公共施設のあり方、災害からの復興。行政、企業、金融機関、地域団体、市民の皆さま、そして学生たちと、多くの現場をご一緒させて頂きました。副学長として地域との関わりを担った経験からも、大学には、知識を伝えるとともに、人と人をつなぎ、ともに考え、実践を支える役割があることを学びました。

そして、九州大学大学院での川波洋一先生(九州大学名誉教授)からの学びも研究者とは何か、その研究者としてのレベルの高さはもとより、使命と覚悟、さらに大学教員としての品格を教わる機会に恵まれました。

学ぶこと、教えること、計画を描くこと、それを動かすことも、一人ではできません。立場の異なる方々のお話を伺い、知恵を出し合い、少しずつ前へ進む。岡山大学や九州大学で頂いた学びとご縁は、今も続く私の活動を支えてくれています。

加えて、政策研究大学院大学では、家田仁先生のご指導の下で、多くの新しい研究者や専門家、そして国の皆さまと、社会インフラの維持管理や地域公共交通、人口減少時代の地域の持続可能性について、議論と研究を重ねています。各地の実践知を持ち寄り、政策や制度、財政、技術の面から捉え直す。そこでの学びは、地域の現場で感じてきた課題を、より広い視野から考える力になっています。

東京で学んだ金融と働く人の暮らし。愛知で深めた産業と地域、教育のつながり。岡山で積み重ねた地域との協働。九州大学での学び。そして、政策研究大学院大学での社会インフラや公共政策をめぐる議論。京都大学では、これらをつなぎ直し、改めて掘り下げて参りたいと考えています。

そして、私にとっての集大成には、お世話になった皆さまから頂いた知恵や経験を、拙いながら、次の世代へバトンを渡すという意味も込めています。そして、新たに得た気づきを、再び岡山の地域へ持ち帰り広め、これまでのご縁がさらに行き交う仕事ができればと願っています。そう思えば、人生、老いを重ねたが故のなせる業とでも申しましょうか、なかなか面白いものです。

 

さて、頭を働かせるにも、歩くにも、まずは腹ごしらえ。

お昼は、出町柳駅と百万遍交差点の間にある中華そば「たく味」へ。京大生に親しまれているお店と聞き、名物のチャーシュー麺を頂きました。

運ばれてきた丼には、特製焼豚の花が見事に咲いています。麺にたどり着く前から、なかなかの迫力です。焼豚の下からはシナチクも顔を出し、食べ進める楽しみが湧いてきました。

ボリュームもたっぷり。若い京大生の胃袋を満足させていることに納得、満腹となりました。67歳にはカロリーオーバーです。ともあれ、しっかり食べ、ありがたく力を頂きました。

この10月からは、週に1回のペースで勤務する予定。研究と教育の傍ら、こうした京都の庶民や学生人気の味を訪ねることを楽しみにしたいと思います。気楽に入れる食堂や、ひと息つける喫茶店。顔なじみのお店ができれば、京都で過ごす時間が楽しくなると、実はワクワク、ドキドキしています。

行く雲と鴨川の流れに任せつつ、皆さまとのご縁を力に、身体とも相談しながらエンヤコリャともうしばらく、残された時間を漕ぎ続けて参ります。

 



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たく味 – 出町柳/ラーメン | 食べログ

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