旧友との語らい―市ヶ谷・一ツ橋・神田にて


30年来の友人で、現在は日本IBMコンサルティング事業本部顧問を務めるF氏と、9月7日、アルカディア市ヶ谷で昼食をご一緒しました。話題は、日本の地方銀行の未来像です。

長いお付き合いですが、お会いするたびに新しい気付きをいただきます。目の前の変化を捉えながら、その先にどのような社会や事業の姿があるのかを見通している。さすがです。日本はこれからどこまで行けるのか。旧友との食事は、頭の中の窓を開けてもらうような、刺激のある時間となりました。

IBMコンサルティングは、金融機関の業務改革において、AIやデータの活用と、組織・業務の見直しを結び付ける支援を進めています。銀行業務向けの取り組みでも、人の判断のもとでAIを運用し、仕事の流れや意思決定の質を高める方向を示しています。

日本IBMは2026年2月、地域金融機関が安全かつ継続的にAIを活用できるよう、データ管理やセキュリティー、利用を適切に統制する機能を備えたAI基盤の構築に着手したと発表しています。また、F氏はフィンテックの研究部門の社長を務めておられました。こうした動きを踏まえ、私自身が改めて考えたのは、地方銀行が地域と向き合う時間を、技術によってどう豊かにできるかということです。書類の作成や情報整理の負担を軽くし、その分、経営者の悩みを聞き、事業承継や新しい挑戦を一緒に考える。地域をよく知る金融機関の強みとAIが結び付けば、地方創生への貢献にも、新たな可能性が開けるように思います。

さて、ちょうど10年前の今日は、学生たちと新見市神郷地区で、環境保全型の森林ボランティア活動に参加し、間伐作業に取り組んでいました。山で汗を流した記憶とともに思い出したのが、昔は木材の搬出に馬を使っていたというお話です。

その記憶に重なるように、9月7日、市ヶ谷から九段、一ツ橋に抜ける途中、たまたま靖国神社の前を通りかかり、軍馬を扱う展示のポスターが目に留まりました。次の約束までの空き時間を利用して、遊就館を拝観する機会を得ました。館内に入るのは初めてです。障がい者手帳の提示により無料で拝観でき、ありがたく利用させていただきました。

開催されていたのは、令和8年遊就館特別展「いななき『軍馬』にみる英霊のご事績」です。午年に合わせた企画で、軍馬の概要や人との関わりを解説し、関係する収蔵品や慰霊の祭典などを紹介しています。写真だけの展示ではなく、資料を通して軍馬の歴史に触れる内容で、会期は3月1日から11月30日までと案内されています。

山で木材を運んだ馬と、戦場へ連れて行かれた馬。

その置かれた状況は大きく異なりますが、人間の営みを動物の力が支えてきたことを考えさせられました。同時に、人の都合で役割を与えられた命に対し、私たちはどれほど思いを寄せてきたのだろうか、とも感じました。

AI万能の時代などと言われる昨今、この展示は、人と動物、人とAIとの関わりについて考えるきっかけにもなりました。命ある動物への責任と、技術を利用する責任は、それぞれに考える必要があります。そのうえで、何を目的に力を借り、その結果に誰が責任を持つのかという問いは、技術が進むほど大切になるように思います。

この日は、一ツ橋の日本教育会館にある「人を大切にする経営学会」の事務局にも立ち寄り、S事務局長と今後の学会の未来像について話し合いました。

同学会は、社員をはじめとする人々の満足や幸せを重視する経営を研究し、その成果を社会に還元することを目指しています。企業の現場で積み重ねられている実践を学び、研究を通じて、その価値を広く伝える役割を担っています。

私としては、これからの学会が、研究者と経営者、さらに若い世代や地域で活動する人々との対話を、いっそう深める場になればと願っています。人を大切にする経営が、働く人の成長や企業の持続性、地域の暮らしにどうつながるのか。具体的な実践から学び、その成果を次の担い手へ届けていくことが大切だと思います。

昼の地方銀行の話題とも、自然につながります。AIを導入する際にも、働く人が学び直す機会や、安心して力を発揮できる環境を一緒に整える。技術の進歩を人の幸せにつなげる視点を、経営の中心に据えておきたいものです。

夜は、トヨタ自動車のS氏と神田のスペイン料理店へ。

白ワインとパエリアをいただきながら、地域公共交通、自動運転、インフラマネジメントについて意見交換をいたしました。

美味しい料理を囲むと、話もゆったりと広がります。昼は金融、夜は移動と社会基盤。いずれも、地域で暮らし続けるために欠かせないものです。

私が地域公共交通を考える際に大切にしているのは、住民が病院や学校、買い物先へ安心して出かけられることです。自動運転への期待も、その暮らしの中に位置付けて考えたいと思います。誰が、どこへ、どのような目的で移動するのか。既存の交通とどうつなぎ、運行を支える人や費用をどう確保するのか。地域の実情に沿って、一つずつ考えていく必要があります。

また、車両の技術とともに、道路や橋、停留所、乗り継ぎ拠点などを維持していく視点も欠かせません。公共施設の配置と交通を合わせて考え、将来の修繕や更新まで見据える。インフラマネジメントへの投資を、地域の暮らしを支える投資として捉えていきたいと、改めて感じました。
10年前に学生たちと汗を流した森林の記憶から、軍馬の歴史、AIと地方銀行、学会の未来、そして地域の移動へ。思いがけず、さまざまな話題が結び付く二日間となりました。

旧友や仕事仲間と顔を合わせ、食事をしながら言葉を交わす。その時間が、自分の考えをほぐし、次の仕事への力を与えてくれます。

F氏、学会事務局の皆様、そしてS氏、学びの多い時間をありがとうございました。パエリアの余韻と、まだ尽きない話の続きを胸に、神田の店を後にしました。

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