名古屋での仕事を済ませ、通常なら新幹線で岡山への帰路につくところですが、8月25日の午後は、少し趣向を変えて、近鉄特急で大阪を経由することにしました。
近鉄名古屋駅から乗車したのは、全席指定の特急「ひのとり」です。移動の時間そのものを、豊かなくつろぎのひとときにする。その考え方が車内の随所に感じられます。全席に、座席の背面を覆う「バックシェル」が設けられ、後ろの方を気にせずリクライニングできるのも、うれしい工夫です。
乗車した列車は三重県の津に停車し、その先は奈良を抜け、大阪の鶴橋まで。車窓には、のどかな里山や田園の景色が広がります。夏の終わりの風景を眺めながら、しばし仕事の緊張をほどき、ゆるりと過ごすことができました。
大阪難波に到着後、地下鉄を乗り継いで西大橋駅へ。今回の寄り道には、楽しみにしていた目的がありました。西区北堀江2丁目9番20号にある「cafe November」を訪ねることです。
ここは、元岡山シーガルズの高柳萌さんが、現役引退後、地元大阪に戻って開かれたお店です。ハンバーガーやパスタ、カレーなどが楽しめる、お洒落なカフェです。シーガルズの顧問を務める私にとって、高柳さんは現役時代から、とりわけ応援していた選手のお一人でした。
高柳さんは大阪府羽曳野市のご出身。大阪国際滝井高校から岡山シーガルズへ進み、身長177センチのミドルブロッカーとして5年間在籍し、2022年に現役を引退されました。ミドルブロッカーは、ネット際で相手の攻撃を阻むとともに、素早い攻撃で味方の得点機会をつくる役割です。仲間との呼吸や、相手の動きを読む判断が求められるポジションでもあります。
高柳さんの活動は、競技の場だけにとどまりませんでした。チームの「人権スポーツふれあい教室」にも参加し、地域との交流を担われています。また、2020年には、万成病院が主催する「第6回万成地域スポーツ功労賞」の個人の部の受賞者に、そのお名前が記されています。スポーツを通じて地域と関わる、シーガルズらしい活動の一端を担ってこられた方です。
引退時には、応援してくださる皆様の温かさや優しさが支えになったこと、5年間に出会った多くの方への感謝を述べられていました。その言葉からも、人とのご縁を大切にされる姿勢が伝わってきます。
そんな高柳さんの新たな舞台を、一度訪ねてみたかったのであります。
ところが、この日はあいにくご本人は非番とのこと。お会いできないのは残念ですが、まずは食事を楽しませていただこうと、ハンバーガーのメニューからアボカドバーガーを選び、アイスコーヒーと一緒にいただきました。
これが、なかなかのボリュームです。大きなバーガーを頬張りながら、美味しく、満足のひとときを過ごしておりました。
すると、なんと、高柳さんがお店に顔を出してくださいました。
「三村先生、お久しぶりです」
思いがけない声に、うれしさがこみ上げました。外出先からわざわざ戻ってくれたとのこと。今日はお会いできないと思っていただけに、感激もひとしおです。相変わらず華やかで、笑顔の素敵な方でした。そして、気さくに声を掛けてくださる親しみやすさも、以前のままです。
お父様は元近鉄バファローズの投手、高柳出己さん。お姉様は芸能界で活躍される高柳愛実さんです。それぞれの分野で歩みを重ねるご家族ですが、萌さんご自身も、バレーボールに打ち込んだ日々を経て、今はお店という新しい場で挑戦を続けておられます。
しばらく、シーガルズ時代の懐かしい話に花が咲きました。久しぶりにお会いしても、こうして自然に言葉を交わせることが、何よりありがたく感じられます。
高柳さんの魅力は、すらりとした立ち姿や華やかな雰囲気に加えて、相手との距離をすっと縮めてくれる、その温かさにあるのでしょう。この日のひと言と笑顔だけで、名古屋からの移動の疲れもほどけていくようでした。
現役を退いて、新しい仕事に踏み出すには、競技とは異なる苦労もあると思います。それでも、こうして自分のお店を持ち、人を迎える場をつくっておられる。その姿を拝見できたことも、長く応援してきた者として、うれしいことでした。これからは選手時代に加えて、お店での出会いを通じ、高柳さんのファンになる方も増えていくのではないでしょうか。
すっかりうれしくなった私は、先ほどハンバーガーをいただいたばかりなのに、人気メニューのカレーライスまで追加注文してしまいました。
こちらも美味しくいただき、お腹は満腹です。再会の喜びが、どうやら食欲まで後押ししてくれたようであります。
仕事帰りに少し道を変えたことで、懐かしい人の新たな歩みに触れることができました。応援していた選手とのご縁が、引退後もこうして続いていく。スポーツを通じていただいたご縁の豊かさを、改めて感じます。
お腹も心も満たされ、気持ちがふわりと解き放された、ありがたい大阪時間でした。
高柳さん、ごちそうさまでした。そして、温かな再会をありがとうございました。
その後は心斎橋から新大阪を経由して、無事に岡山へ。夏の終わりの寄り道が、心に残る一日となりました。
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