ふるさと伊予小松

石鎚国定公園、西日本最高峰・石鎚山。その登山口駅となるJR予讃線・伊予小松駅が、私の生家の最寄り駅です。

この一年ほど、実家の整理を少しずつ進めてまいりました。シロアリ対策も終わり、ようやく「どなたか大切に使ってくださる方へお譲りできれば」と考え始めた矢先、思わぬ問題が見つかりました。

隣地との境界部分に、細いひも状の土地があり、そこに昔の担保設定が残っていたのです。

古い登記簿をたどりながら、ご近所の方々や親せきの皆さんに知恵をお借りし、司法書士さんにもお願いして、少しずつ整理を進めています。こういう作業をしておりますと、田舎というのは、やはり“人の記憶”で成り立っている部分が大きいのだなあと、しみじみ感じます。

もちろん、空き家となった実家へ風を通しに帰ることも、大切な目的のひとつです。人が住まなくなった家は、驚くほど早く傷みます。戸を開け、空気を入れ替え、庭を眺めるだけでも、家が少しほっとした顔をするように思えるのであります。

さて、実家の周囲では、麦の穂が黄金色に揺れておりました。

私の記憶では、このあたりの麦づくりはいったん減っていたように思うのですが、ロシア・ウクライナ戦争以降、小麦不足が話題となるなかで、再び耕作が始まったようです。世界の出来事が、静かなふるさとの風景にも、確かにつながっていることを感じました。

ところで、伊予小松駅前にある真鍋さんの名店「マルブン小松本店」に立ち寄るのを楽しみにしていたのですが、連休明けでまさかのお休み。これは残念無念でありました。次回のお楽しみに取っておこうと思います。

その代わりと言っては何ですが、実家のお隣さんからは、畑で採れたばかりの、ほうれん草、インゲン、空豆をいただき、さらに滋賀県出身の知人からは、琵琶湖で獲れた稚鮎の自家製佃煮のおすそ分けまで頂戴しました。

春の恵みというものは、どうしてこうも人の心を柔らかくするのでしょう。

けっして豪華な料理ではありませんが、こうした季節の味わいを囲む食卓には、人のぬくもりや、ご縁のありがたさが静かに宿っているように思います。

歳を重ねますと、「豊かさ」とは何かを、若い頃とは少し違う形で考えるようになります。

人に支えられ、土地に支えられ、季節に支えられて生きている。

そんな当たり前のことを、ふるさとは静かに教えてくれるのであります。

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