トヨタ自動車の研究所勤務時代に大変お世話になった上司の方と、4月4日、実に久しぶりに一献を傾ける機会に恵まれました。
かつて私が身を置いたのは、トヨタグループのシンクタンクである「株式会社現代文化研究所」であります。
同研究所は1970年代から、自動車に関連する市場の予測分析や産業環境の分析を担い、トヨタグループの戦略立案や業界団体の見解作成にも貢献してきた、いわば“知の基盤”ともいうべき存在でありました。その研究所も、この3月をもって静かに幕を下ろしたと聞き、時代の一区切りを感じているところであります。
さて、元上司は、トヨタ自動車の渉外活動を最前線で長年けん引されてきた、まさに百戦錬磨の御仁です。
また、万事何事にも博学であり、日本全国の話題には事欠きません。とりわけ日本酒にはめっぽう詳しい粋な通人です。
待ち合わせはJR西国分寺駅。再会の挨拶もそこそこに、「いい店があるんだ」との一言で連れて行っていただいたのは、焼き鳥が評判の居酒屋「鳥芳」でありました。
一串ごとに丁寧な仕事が感じられ、思わず会話の合間に「これは参りました」と唸ってしまう味でありました。とりわけ、レバーを軽くあぶったレア系の一串は絶品でありました。ありがたくもご厚意に甘え、すっかりごちそうになってしまいました。
盃を重ねるうち、話題は自然と研究所時代の思い出へと遡ります。
国の政策を読み、そして市場を読み、自動車産業の行方を見通し、企業と社会の接点をどう築くか、当時、トヨタグループを核として、あの場で交わされた議論や「現地現物」を謳うトヨタ流の論理思考の一つひとつが、いま振り返れば、現在の自分の礎となっていると実感します。
やがて盃を重ねることしばし、いよいよ話は佳境となり、これからの生き方へ。
「これからはジイジらしく、義理と人情を大切にして、余生を面白く過ごしていこうではないか」と、どこか照れくさくも温かな“合意”に至りました。
合理と効率を追い求めてきた仕事の世界のなかで、最後に残るのは、やはり人と人とのつながり「ご縁」です。
研究所という“場”は閉じられても、そこで育まれた「ご縁」や「志」は、少しも色褪せることはありません。
実に、めちゃくちゃ楽しいひとときでありました。
こうしたセカンドステージを重ねていけると、それが豊かな人生なんだろうと、そんな思いを胸に、静かに帰路についた春の宵でありました。
