大栄スイカの贈り物

午後から県北で所用がありました。

道中、国道53号沿いの岡山市北区御津にある人気カレー店「マハラジャ」に立ち寄りました。久しぶりの訪問です。チキンと野菜のカレーを選び、フランクフルトをトッピングし、辛さを少しだけ加えてもらいました。ライスは白米と玄米を半々にしていただきました。窓の外には初夏の深い緑が広がり、落ち着いた店内の雰囲気と相まって、束の間の休息となりました。

 

県北での用件を無事に終えると、不思議なことにまだ走り足りない気分になりました。気が付けばハンドルはさらに北へ向かい、中国山地を越えて日本海を目指していました。

目的地は、鳥取県北栄町(旧大栄町)です。

全国有数のスイカの産地として知られる「大栄スイカ」のふるさとです。

大栄スイカは、鳥取砂丘に代表される水はけの良い砂地と、日本海から吹く爽やかな風、昼夜の寒暖差という恵まれた自然条件の中で育てられます。糖度が高く、シャリシャリとした歯触りと豊富な果汁が特徴で、その品質は全国でも高い評価を受けています。厳しい選果基準をクリアしたものだけが「大栄スイカ」として出荷され、毎年夏になると贈答品として全国へ届けられています。

購入地は、「道の駅大栄」の特設売り場です。

訪れるたびに目指すのは、畑から収穫したての見事な四Lサイズの特選品です。

立派な姿を目の前にすると、生産者の皆さんが丹精込めて育てられた努力が伝わってきます。「岡山から買いに来ました」と売り場の女性に伝えると「私もこのシーズンは売り場のお手伝いに兵庫から来ています。これほど大きく、美しく育てるためには、日々の水管理や温度管理、玉の向きを整える作業など、数え切れないほどの手間が積み重ねられているようですよ」と説明してくれました。

この「道の駅大栄」は、全国で道の駅制度がスタートした平成5年(1993年)に登録された「道の駅登録第1号」の一つとして知られています。国土交通省が進めた道の駅構想は、「休憩機能」「情報発信機能」「地域連携機能」の三つを柱として始まりました。それまで道路沿いの休憩施設であった存在を、地域の魅力を発信し、人と地域を結ぶ交流拠点へと発展させた画期的な制度です。

「道の駅大栄」もその理念を体現する施設の一つです。国道9号沿いに位置し、日本海を訪れる多くの旅行者の休憩拠点として親しまれているだけでなく、地元農家が丹精込めて育てた新鮮な農産物や加工品を販売する直売所としても高い人気を誇っています。そして、夏になると店頭には大栄スイカがずらりと並び、その壮観な眺めは北栄町の夏の風物詩となっています。生産者の皆さんが直接持ち込まれる新鮮な野菜やメロンをはじめ果物も豊富で、まさに地域の「食」と「人」を結ぶ交流の場となっています。

 

また、北栄町は世界的人気漫画『名探偵コナン』の作者・青山剛昌先生の出身地としても全国に知られています。町内には「青山剛昌ふるさと館」が整備され、先生の創作活動や代表作品を紹介する展示のほか、貴重な原画や資料を見ることができます。館内だけでなく、道の駅からふるさと館へ続く「コナン通り」には、江戸川コナンをはじめ、毛利蘭、怪盗キッド、阿笠博士など、おなじみのキャラクターのブロンズ像やモニュメントが点在しており、まるで作品の世界を歩いているような気分にさせてくれ、国内はもちろん海外からも多くのファンが訪れ、鳥取県を代表する観光スポットとなっているようです。

農業という一次産業、漫画という文化資源、そして道の駅を核とした交流拠点が見事に連携し、一つの地域ブランドを形成している姿は、地域経営や地方創生を研究してきた私にとっても大変参考になります。地域の「宝」を磨き、それを地域全体で育て、多くの人々との交流につなげていく。この積み重ねこそが、人口減少時代における持続可能な地域づくりの一つのモデルではないかと感じました。

 

購入した大栄スイカは、その場から東京へ発送しました。

そして翌日の夕方、五歳になる孫娘の誕生日祝いとして、娘から無事に届いたと連絡が入りました。

「スイカ、大好き!」その一言が何よりうれしく感じました。

送られてきた写真には、大きなスイカの横で満面の笑みを浮かべる孫娘が写っていました。そして、お気に入りなのでしょうか、スイカ柄のかわいらしい洋服まで着ていました。あまりの偶然に思わず笑ってしまいました。

岡山から鳥取、日本海まで足を延ばした甲斐がありました。

祖父母にとって、孫の笑顔ほど元気をもらえるものはありません。多少の遠回りも、長距離運転も、その笑顔一枚ですべて報われます。

今回が最後の暴走ジイジ。

そう思いながらハンドルを握りましたが、孫たちの笑顔が待っている限り、その「最後」はもう少し先になるのかもしれません。

それにしても、孫の「スイカ、大好き!」の一言には勝てません。

また来年の夏も、いや、その次の夏も、きっと私は日本海へ向かって車を走らせているかもです。そんな「暴走ジイジ」でいられる健康に感謝しながら、地域の宝を訪ね歩き、その魅力を次の世代へ伝えていきたいと思っています。

 

さて、地域には、その土地でしか育まれない「宝」があります。

大栄スイカは単なる特産品ではありません。生産者の誇りであり、地域ブランドであり、人と人をつなぐ贈り物でもあります。そして道の駅は、地域の魅力や文化、食を全国へ発信し、人々の交流を生み出す重要な地域経営の拠点でもあります。

私はこれまで公共政策や地域経営を研究してきましたが、地域資源を大切に育て、その価値を磨き、多くの人に伝えながら次の世代へ受け継いでいくことこそ、持続可能な地域づくりの原点であると考えています。

大栄スイカも、道の駅も、そして青山剛昌先生が生んだ『名探偵コナン』も、北栄町にしかない地域資源です。それぞれを大切に育て、地域全体の魅力として発信している姿は、全国の自治体が学ぶべき地方創生の好事例ではないでしょうか。

 


■関連リンク

道の駅大栄 – 北栄町公式ホームページ(産業振興課)

 

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