2026年8月12日から16日までの四泊五日、妻と二人で伊豆高原の「やすらぎの里・養生館」に滞在しました。今回の目的は、日頃の仕事や移動から少し距離を置き、食事を整え、身体を動かし、温泉につかり、施術を受け、よく眠ること。そして、自分自身の心と身体をゆっくり点検することです。
やすらぎの里は、断食や養生食、天然温泉、施術、ヨガ、瞑想、ウォーキング、食やセルフケアの講座などを組み合わせ、生活そのものを見直す滞在型施設です。本館、養生館、高原館の三館があり、今回滞在した養生館は、浮山温泉郷の豊かな緑に囲まれています。
食べ過ぎ、働き過ぎ、情報の取り過ぎ。現代生活の中で知らず知らずのうちに増えていく「足し算」を一度減らしてみる、いわば「引き算の養生」です。
到着後、まずはスタッフの方との面談です。体調や健康状態、普段の生活、今回の滞在目的などを伝えました。浮山温泉郷周辺を散歩し、「身体の瞑想」で呼吸や身体の感覚に意識を向けると、いつもの慌ただしい時間から、少しずつ養生生活へ切り替わっていきます。
最初の夕食は、具のない味噌汁一杯だけでした。
分かって来ているとはいえ、目の前にお椀一つが置かれるとなかなか潔いものです。しかし、急がずにゆっくり味わうと、味噌や出汁の風味が、普段よりもはっきりと感じられました。
翌朝からは、朝ヨガ、周辺ウォーキング、はちみつ紅茶、全身マッサージ、カッピングと続きます。朝食はニンジンとショウガのスムージーです。
その後、妻と伊豆高原駅から伊豆急行に乗り、富戸駅へ向かいました。富戸漁港まで歩き、さらに「ぼら納屋」を見学。本来なら、そこから城ヶ崎海岸の自然研究路を歩き、吊り橋や蓮着寺まで行く予定でした。
ところが、突然の猛烈なゲリラ豪雨です。
城ヶ崎海岸は、大室山の噴火によって流れ出した溶岩と、長い年月にわたる波の浸食によって形成された雄大な海岸です。しかし、岩場やアップダウンのある海岸沿いを豪雨の中で歩くのは危険です。無理をせず予定を断念し、バスと伊豆急行を乗り継いで伊豆高原駅へ戻り、そこから養生館まで歩いて帰りました。
自然は素晴らしい景観と恵みを与えてくれますが、時として人間の想像を超える脅威にもなります。滞在中、各地の豪雨被害が報じられていたこともあり、自分たちの体験と重ねながら、ニュースをいつも以上に身近なものとして受け止めました。
近年の豪雨を例外的な出来事ではなく、いつでも起こり得るリスクとして捉え、防災、道路、河川、避難、情報伝達などを一体的に考えなければなりません。
養生館へ戻ってからは「世界一簡単なお出汁講座」と「食べる瞑想」です。ドライフルーツ3個を、色、香り、食感、甘みに意識を向けながら、時間をかけて味わいました。夕食は豆乳スープ一杯。その後、安眠ヨガで一日を終えました。
断食食を終えると、いよいよ回復食です。
最初にいただいたのは、大根のスープとニンジンのシャーベット。野菜そのものの甘みや香りが、驚くほど鮮明に感じられます。ヘッドマッサージとひまし油湿布の施術も受け、身体の内側と外側の両方を整えていきました。
この日は妻と養生館から八幡野港まで歩き、前日の富戸側とは反対方向から城ヶ崎自然研究路へ入りました。「びゃくび」付近まで散策しましたが、前日からかなり歩いていたため、さすがに疲れて引き返しました。
どうやら私の場合、「何もしない」という養生は少々難しいようです。
八幡野港では、その夜に開催される「やんもの里花火大会」の準備が進められていました。「やんも」とは、この地域で親しまれてきたヤマモモの呼び名に由来するといわれています。
華やかな花火の裏側で、地域の皆さんが会場の準備や安全確保に汗を流しておられました。こうした姿を見ることができたのも、自分の足で歩いて地域へ入ったからこその発見です。
途中の魚屋さんでは、新鮮で美味しそうなアジの開きを見つけました。しかもお安かったので、思わず10枚予約しました。
断食明けの回復食の最中に、帰宅後に食べるアジを10枚予約するのですから、我ながら少々おかしな話です。しかし、食べない時間を経験しているからこそ、次に何を食べるかが楽しみになります。
夕食は、玄米粥、豆腐の味噌汁、梅干し、黒ゴマでした。二日前なら「これだけ?」と思ったかもしれませんが、断食後には立派なご馳走です。一口ずつ、ゆっくり味わいました。
そして夜8時、いよいよ「やんもの里花火大会」です。
私たちには、とっておきの特等席がありました。養生館の展望露天風呂です。
温泉につかり、夜風に当たりながら眺める花火。昼間、自分たちが歩き、地域の皆さんが準備していた八幡野港から、大きな花火が次々と打ち上がります。
「あそこで準備していたんだな」
そう思いながら眺める花火は格別でした。温泉のぬくもりと伊豆の夜風、そして夜空を彩る光。忘れられない夏の思い出となりました。
