「しまね人財塾WEST」お手伝い報告

夕暮れの宍道湖と国宝松江城は、何度訪れても心を穏やかにしてくれる、私にとって特別な風景です。

7月8日、ふるさと財団の地域再生事業の現地視察(生野銀山と街並み活性化事業の評価業務)を終え、兵庫県朝来市の播但線生野駅で参加者の皆様と別れました。私は姫路から山陽新幹線で岡山へ戻り、さらに伯備線へ乗り換えて松江へ向かいました。

ホテルへチェックインした後は、松江市内を巡るレイクライン(ぐるっと松江レイクライン)に乗車し、車窓から島根電工様の本社を拝見してから国宝松江城を一周眺めながら城下町の風情を楽しみました。その後、宍道湖畔に建つ島根県立美術館を訪れました。閉館間際ではありましたが、美しい館内をゆっくり鑑賞し、夕日に染まる宍道湖の静かな景色に心を癒されました。

さらに、市街地で天然温泉を見つけ、700円という手頃な料金で入浴できる清潔な温泉に身を委ね、視察業務の疲れをゆっくりと癒すことができました。歩けば夜になっても汗がにじむ暑さで、中国地方もいよいよ梅雨明けを迎えたことを実感しました。

翌7月9日は、「しまね人財塾WEST」を主催されている一般社団法人しまね人財研究会代表理事であり、「ありがとう創造社」代表取締役の太田利昭様にホテルまでお迎えいただき、日本海沿いの浜田市へ向かいました。

「しまね人財塾WEST」は、人口減少や地域経済の縮小という課題に直面する島根県西部地域において、「地域の未来を担う人財を育てる」ことを目的に設立された学びの場です。企業経営者、行政職員、教育関係者、福祉関係者、学生など、多様な立場の方々が業種や世代を超えて集い、「人を大切にする経営」「地域経営」「人材育成」「地方創生」について学び合い、互いに実践を共有する極めて特色ある地域塾です。単なる講演会ではなく、地域全体で人づくりを進める「共創の場」として着実に歩みを重ねておられます。

会場となったのは、島根県浜田市にある島根県立大学浜田キャンパスのホールでした。

当日は「人を大切にする経営」をメインテーマとして基調講演を務めさせていただきました。この日の日本海は、どこまでも澄み渡る青空の下で深いコバルトブルーに輝き、真夏の日差しを受けて美しくきらめいていました。

会場には、人財塾メンバーの企業経営者の皆様をはじめ、社会福祉法人関係者、島根県や浜田市の職員の皆様、そして島根県立大学や島根大学の学生の皆さんなど、40名を超える方々が参加されました。

基調講演に続いて、浜田市の三浦大紀市長が登壇されました。その後、太田代表理事の進行により、市長と私との対談形式でディスカッションの時間が設けられました。

三浦市長は早稲田大学政治経済学部のご出身で、若さあふれる行動力と確かな政策的視点を兼ね備えたリーダーであります。人口減少社会を前向きに乗り越えるための地域経営、産業振興、人材育成などについて率直な意見交換をさせていただき、多くの学びを頂戴しました。

会場からも活発な質問が相次ぎ、予定時間いっぱいまで熱心な議論が続きました。島根県西部には、地域の未来を真剣に考え、自ら行動する人々が数多くおられることを改めて実感し、地方創生の可能性を強く感じた一日となりました。

夜の懇親会では、講演会以上に熱い議論が交わされました。地域企業の経営者、行政職員、大学関係者が垣根なく交流し、「人づくりこそ地域づくり」という共通の思いを語り合う姿に、しまね人財塾が地域に深く根付いている理由を感じました。

翌7月10日、朝早くホテルをチェックアウトし、JR浜田駅から山陰本線の下り普通列車で益田駅へ向かいました。益田駅からは連絡バスで萩・石見空港へ向かい、羽田便に搭乗するためです。

浜田駅から益田駅までの運賃は770円。この区間は、私にとって忘れられない鉄道旅となりました。

山陰本線は京都から幡生まで日本海沿いを結ぶ日本屈指のローカル幹線ですが、その中でも浜田から益田までの区間は、山陰海岸の雄大な自然を最も身近に感じられる絶景路線の一つとして知られています。

列車は海岸線に沿って走り、右手には紺碧の日本海がどこまでも広がります。夏の朝日に照らされた海面は銀色に輝き、白い波が岩礁へ静かに打ち寄せます。海と山が驚くほど近く、トンネルを抜けるたびに表情を変える海岸線が次々と現れます。

小さな漁港では色鮮やかな漁船が静かに停泊し、集落の向こうには棚田や里山の緑が広がります。大きな観光施設はありません。しかし、人々の暮らしと自然が一体となった日本の原風景が、そのまま車窓いっぱいに広がっています。

この区間は、「山陰ジオパーク」の壮大な地形を感じさせる景観や、石州瓦が赤く輝く家並みなど、山陰ならではの文化と自然が凝縮された路線でもあり、鉄道ファンのみならず、多くの旅行者を魅了しています。

朝の時間でしたので、途中駅まで、乗客は高校生で溢れて若いパワーを感じることができました。そして、特急では味わえない各駅停車ならではのゆったりとした時間の流れの中で、日本海の美しさを存分に堪能することができました。朝から心が洗われるような贅沢なひとときでした。

こうして萩・石見空港から羽田へ向かい、東京でもうひと仕事を終えて、今回の出張を終えました。

振り返れば、7月7日から10日にかけて、生野銀山と石見銀山という、日本の鉱山史を代表する二つの銀山文化圏を訪ねることができました。日本遺産「銀の馬車道・鉱石の道」と、世界文化遺産・石見銀山を結ぶ旅は、日本の近代化を支えた鉱山と交通の歴史、そして地域に受け継がれてきた文化の重みを改めて学ぶ貴重な機会となりました。

そして何より、播但線、伯備線、山陰本線、地域バス、そして航空機を乗り継ぎながら、本数の限られた公共交通を利用することで、地域の現状と課題を肌で感じることができました。

人口減少社会において公共交通は単なる移動手段ではありません。高校生たちの通学や現役からシルバー層までの大切な足となり、地域の暮らしを支え、人と人をつなぎ、観光客の移動を含めた地域経済を支える重要な社会インフラとなっています。生野エリアでも石見エリアでも地域モビリティの維持は大きな地域課題として指摘されました。

こうした時刻表とにらめっこしながら各駅停車に揺られ、日本海や山々の風景をゆっくり眺める視察や講演での移動は、半分は仕事であり、半分は地域を学ぶ旅でもありました。

「人を大切にする地域づくり」とは、人を育て、人をつなぎ、その地域に暮らし続けられる環境を守ることにほかなりません。

今回の山陰への旅は、人を育てる力と、日本海が教えてくれた地域の豊かさを改めて深く教えてくれた、忘れることのできない四日間となりました。

改めて、太田代表はじめ島根の皆々様に心より深く御礼申し上げます。

 


■関連リンク

一般社団法人しまね人財研究会【公式】 | 人を育てる人を育てる

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