秋の岡山、灯りと音楽と語らいの三連休

秋の岡山で過ごす三連休。遠くへ出かけるのもよいですが、身近なまちをゆっくり歩き、人に会い、音楽に耳を傾ける休日も、なかなか味わい深いものです。10月10日から12日まで、西川のキャンドルの灯りに懐かしい時間を重ね、古い家で秋の夜長を楽しみ、倉敷では地域の未来を語り合いました。

10月10日は、久しぶりに岡山市の西川緑道公園へ。「西川キャンドルナイト」の灯りを訪ねました。2006年から続くこの催しは、今回でvol.22。岡山市の協力で会場の街灯を消し、約1,500個のキャンドルで水辺を彩るという、まちなかならではの秋の一夜です。

西川の水面に映る灯りは、流れに合わせてゆらゆらと揺れています。その揺らめきを眺めていると、このまちで出会った方々や、折々の出来事が思い起こされます。懐かしい思い出までが、キャンドルの光を受けて静かに輝いているようでした。

この催しを支えるのが、NPO法人タブララサの皆さんです。「タブララサ」とは、ラテン語で白い板、白紙の状態を意味する言葉。その名のとおり、自由な発想で地域の魅力を引き出し、人が集い、まちに関心を持つきっかけをつくっています。キャンドルナイトのほか、リユース食器の活用やイベントのごみ削減など、楽しみながら環境を考える活動にも取り組まれています。

会場では、タブララサをはじめ、岡山の若い世代が生き生きと活躍されていました。自分たちの手で、いつもの公園を少し特別な場所に変えていく。その姿を見るのはうれしいものです。こうした一夜を重ねることが、「このまちで暮らしていてよかった」という気持ちを育てていくのでしょう。灯りを囲む人々の穏やかな時間に、まちづくりの豊かさを感じました。

翌10月11日は、岡山市内の「博士の家」へお招き頂きました。岡山市北区広瀬町にあるこの家は、岡山大学医学部附属病院長などを務めた医学博士、津田誠次先生ゆかりの建物です。昭和初期に建てられた家を後世に残し、公益的な活動に役立てたいとの思いから改修され、子どもや子育て中の方、地域の皆さんが集い、学び、ひと息つける場所として活用されています。

おかやま入居支援センターの活動拠点でもあり、住まいの確保に困難を抱える方を支える活動と、地域の人々が出会う場がつながっています。「博士の家みんな食堂」などの取組も重ねられ、家を残すことが、人の居場所を育てることへと結びついているのです。

この日は、おでんとカレーをご馳走になりました。カレーはボン・ヴォイージ岡山店主の安藤弘子さんお手製の逸品です。先週、本店で頂いた写真をアップいたします。また、秋の夜に頂く温かなおでんは、それだけでほっとします。お腹が満たされたところで、女性コーラスの歌声、落語、そしてSPレコードと、なんともぜいたくな時間が続きました。

とりわけ心に残ったのは、ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管弦楽団による1937年の演奏です。SPレコードから届く音色には、長い年月を経てきた深い味わいがありました。古い家の中で、古い録音に耳を澄ませる。演奏が刻まれた時代と、今ここに集う私たちの時間が、音楽を通してそっと重なるようです。

実は「お月見に」とお誘い頂いたのですが、聞けば、この日は新月だそうです。暦を確かめても、確かに10月11日は新月でした(笑)。 月は見えずとも、おいしい食事と歌声、笑いと音楽がそろえば、秋の夜長を楽しむには十分です。月の姿がなかったことも、かえって忘れられない思い出になりました。

そして10月12日は、朝の散歩の途中で、町内会である桑田町の秋祭りに練り歩いた山車(屋台)を桑田公園の倉庫へしまう作業を町内会の皆さんがされていました。重量があり、なかなか思うように格納できない様子であり、微力ながらお手伝いをさせて頂きました。倉敷へ。荒木勝先生(岡山大学名誉教授)のお声がけと、大久保憲作先輩のコーディネートにより、東京からのお客様を、岡山の経済界、教育界で活躍される皆様とお迎えしました。話題は、高梁川流域の未来と地域共創です。ランチは、大久保さんの行きつけのお店で名物ハヤシライスを頂きました。チョイスは卵乗せにいたしました。会場のMASC展示場の2階で議論が始まりました。大久保会長から高梁川流域連盟の趣意書を引用された、流域のつながりについて、その大原家と関わりと今日的な課題が語られました。続いて私から岡山大学が高梁川流域で活動してきた歩みを紹介させて頂き、質疑応答となりました。高梁川流域を思うと、上流の森林や山里から、農業、ものづくり、そして倉敷、水島の産業へと、さまざまな営みが浮かびます。川は自治体の境界を越えて流れ、その水に支えられる暮らしもまた、互いにつながっています。これからの地域共創では、そうしたつながりを確かめ直し、それぞれの土地で培ってきた知恵や経験を持ち寄ることが大切であると確信いたしました。

久しぶりに訪れた「語らい座 大原本邸」は、倉敷の産業と暮らしを支えてきた大原家の歴史が息づく場所です。建築は1795年に始まり、増築を重ねて明治中期にはほぼ現在の姿となりました。主屋や離れ座敷、倉などが国の重要文化財に指定されています。商いと家族の日常が積み重なった建物には、長く使い継がれてきた家ならではの奥行きがあります。

「語らい座」という名には、歴史を受け止めながら、今とこれからについて語り合う場でありたいという思いが込められています。その場所で地域の未来を考えることに、深い意味を感じました。岡山県の教育界で長くご活躍をされ、岡山大学の教授経験もお持ちの、山下陽子元館長にご案内役をお願い申し上げました。

大原家が歩んだ歴史に触れると、地域に生まれた力を、次の世代の学びや文化、暮らしへどうつないでいくかという問いが、自然と胸に浮かびます。秋を迎えた大原本邸で、皆様と善き時を過ごさせて頂きました。

西川の水面に揺れるキャンドル、博士の家に響く歌声と古いレコード、そして大原本邸での語らい。三日間を振り返ると、どの場所にも、人を迎え、場を整え、大切に守り育てている方々の姿がありました。

のんびり過ごした秋の三連休。身近な岡山、倉敷のまちに、まだまだ味わいたい時間があることを教えて頂きました。お世話になった皆様に感謝しながら、灯りと音楽と語らいの余韻を、もう少し楽しんでいたいと思います。

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