9月28日、岡山市男女共同参画社会推進センター「さんかく岡山」を会場に、「三都市シンポジウム2026 in 岡山」が開催されました。今回の統一テーマは「まちなか回帰」です。表町商店街のまち歩きから始まり、各都市の実践報告や政策シナリオを通じて、これからのまちなかのあり方を考える時間となりました。
このシンポジウムは、2005年に始まり、金沢・熊本・岡山の持ち回りで、今回が18回目。各都市の商店街・大学・自治体が連携する、「三都市×三者」というユニークな枠組みです。商いの現場を担う人、地域を研究し学生を育てる人、政策を担う人が一緒に街を歩き、それぞれの立場から語り合います。都市を越え、立場を越えて学び合う関係が、長く続いてきました。
私の過去の活動を振り返ります、この交流が、私自身のまちづくりを考える大切な機会になってきたことを改めて感じます。2015年には、岡山の「学都」構想や中心市街地の活性化、岡山駅周辺と表町を結ぶ回遊性の向上などとともに、金沢大学・熊本大学との三都市交流について語り合いました。つまり、大学が地域の中でどのような役割を果たすのか。その問いを、現場で確かめ続けてきた歩みでもあります。
とりわけ、2022年6月の熊本開催では、まち歩きから多くを学びました。熊本大学の先生方の案内で桜町地区や花畑広場などを訪ね、バスターミナルと商業施設、文化施設、広場がつながるまちづくりを見学しました。緑に囲まれて座り、お茶を飲み、待ち合わせができる空間。歩く人のためにゆとりを持たせた道。都市の魅力は、そこで人がどのように時間を過ごせるかによって育つのだと痛感しました。
まち歩きの後は「城見櫓」で、三都市の報告と意見交換が行われました。熊本からは歩いて楽しめる中心市街地づくり、岡山からは県庁通りの車線を減らし、歩行者の空間を広げる取り組み、金沢からはコロナ禍による来訪者の減少に向き合う商店街の挑戦が紹介されました。熊本城を望みながら、都市や所属の垣根を越えて本音で語り合った時間も、懐かしく思い出されます。
2023年の岡山開催では、「若者が活躍するまちづくり」がテーマとなりました。金沢では学生や移住者の参加、熊本では企業・商店街・大学が連携した学びと居場所づくり、岡山では高校生や大学生が行政・企業・NPOをつなぐ役割などが取り上げられました。若者が地域の活動に加わることで、新しい企画が生まれ、大人同士の関係も変わっていく。その可能性を三都市で確かめ合う機会でした。
続く2024年の金沢開催では、「文化都市としての未来」をテーマに、学生と商店街の協働、多文化交流、災害からの復興などが議論されました。金沢大学の学生による尾張町商店街との活動も報告されました。商業、文化、学び、そして災害に向き合う地域の力。まちの持続性を考える視野が、交流を重ねる中で広がってきたことが分かります。
こうした歩みの先に、今回の「まちなか回帰」があります。
表町商店街を皆さまと歩きながら、日頃見慣れた街も、他都市の方々と一緒に見ることで、改めて考える対象になると感じました。どのような場所なら立ち寄りたくなるのか。買い物の前後に、どこで休み、誰と出会い、何を楽しむのか。まちなかを歩くことは、そこで過ごす人の気持ちから、街の使われ方を見直すことでもあります。
シンポジウムでは、岡山大学の岩淵泰先生のコーディネートで進行しました。金沢チーム、熊本チーム、岡山チームの順に問題提起や実践的な取組みが報告されました。また、大学生による商店街での実践活動や、各都市の政策シナリオが報告され、議論が深まりました。岡大生からのコメントも、興味深く聞かせていただきました。学生自身が現場に入り、経験したことを自分の言葉で語る。その姿に、大学と地域が共に学ぶことの意味を感じます。
学生は、地域に新しい視点を持ち込んでくれる存在です。同時に、商店主の仕事や暮らしに触れ、思いどおりには進まない現実からも学びます。地域の側も、学生の問いかけを受けて、当たり前と思っていた街の魅力や課題を見直す。こうしたやり取りを続けることが、まちなかへの愛着と、次の担い手を育てていくのだと思います。
私にとって「まちなか回帰」とは、日常の中に、いかに街へ出かける理由やコトを増やすかだと思います。買い物をする、学ぶ、誰かに会う、文化に触れる、少し休む、食事やお酒を楽しむ。そのためには、魅力ある店や活動の場とともに、訪れやすい交通や、安心して歩ける環境も欠かせません。人が集まる風景の先に、暮らしの豊かさをどうつくるかが問われています。
2005年から積み重ねてきた三都市の交流は、互いの実践を持ち寄り、自分たちの街を考え直す、息の長い学びの場です。その輪の中で、学生たちが語り、行動する姿を見られることを、うれしく思います。
金沢、熊本、岡山。それぞれの街の個性を大切にしながら、また訪れたい、ここで過ごしたいと思えるまちなかを育てていく。長年この交流を支えてこられた皆さまに感謝しつつ、来年は金沢開催、そしてこれからの未来に続く展開を楽しみにしています。
