岡山県立美術館で開催中の特別展「サーカス!~ようこそ夢の世界へ~」が開催されており、8月9日、行ってまいりました。会場に入ると、そこはまさに夢とロマンに満ちたサーカスの世界が広がりました。近代サーカスは18世紀のヨーロッパで始まり、幕末に日本へ伝わったとされています。華やかな衣装、息をのむ曲芸、観客を笑わせる道化師。サーカスは非日常の楽しさに満ちていますが、その舞台裏には、旅から旅へと移動する芸人たちの哀愁や孤独、厳しい鍛錬もあります。今回の展覧会では、そうしたサーカスの光と影を、国内外の多彩な美術作品からひもといています。シャガールやルオーをはじめとする20世紀ヨーロッパの絵画、ピカソ、マティス、ローランサンなど、世界的な芸術家たちがサーカスや道化師に寄せたまなざしにも触れることができました。日本の作品では、幕末の曲芸団の様子を伝える浮世絵、さらに岡山ゆかりの国吉康雄や竹久夢二の作品まで並びます。特に、華やかな舞台を描いた作品がある一方、道化師の表情から、その奥にある寂しさや人生の陰影を感じさせる作品が数多くありました。同じサーカスを題材にしながら、作家によって捉え方がまったく異なるところが、この展覧会の面白さです。
岡山を拠点として世界で活躍してきた木下サーカスの貴重な所蔵資料も展示されています。木下サーカスは1902年に創立され、120年以上にわたり、人々へ夢と感動を届けてきました。岡山が世界に誇る文化であり、地域に根を張りながら挑戦を続けてきた企業でもあります。また、とりわけ印象的だったのが、切り絵作家・酒井敦美さんによる体験型作品「旅する光のサーカス」です。横幅7メートル、奥行き17メートルの空間に、光の切り絵とサキタハヂメさんの音楽が広がります。光と影に包まれながら、観る人自身が幻想的なサーカスの中へ入り込んだような感覚を楽しめました。
撮影が許可されている作品や場所もあり、思わず写メを撮りたくなる場面がいっぱいでした。世界と日本の名画に出会い、サーカスの歴史を学び、幻想的な光の空間も体験できる、とても面白い展覧会で、何より、館内は涼しくて快適でした。酷暑の続く岡山ですが、涼しい美術館で芸術とサーカスの世界を巡るひとときは、まさに「大人の夏休み」。ご家族にも大人の皆さまにもお薦めです。
そして、8月9日の午後から、岡山商工会議所の岡﨑彬前会頭と久しぶりに一献をご一緒させていただきました。場所は林原美術館です。館長室の事務所で開催された、真夏の鍋パーティにお招きいただきました。
岡﨑さんは1943年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、静岡瓦斯を経て岡山瓦斯に入社され、1980年に同社社長へ就任されました。1998年から2019年まで、実に21年間にわたり岡山商工会議所会頭を務められた、岡山経済界を代表する重鎮です。会頭在任中には、西大寺商工会議所との合併を進めるとともに、岡山市の政令指定都市移行にも力を尽くされました。都市基盤の整備、地域産業の振興、広域交通網の充実など、岡山の将来を見据えて長年にわたり発言と行動を続けてこられました。
久しぶりにご一緒させて頂きましたが、お話は明快で、ユーモアもあり、地域の将来を見通す眼力は今もまったく変わりません。私との関係では、岡山駅前にイオンモール岡山の建設計画が持ち上がり、イオンモール岡山出店対策検討員会のアドバイザーを拝命した時の会頭であり、岡山シーガルズの専用練習場を建設して欲しいとの願いをお聞き届けいただき、通称、シーガルズ委員会を設立頂いたこと、さらに岡山が生んだ偉人である山田方谷を顕彰する活動をお手伝いしたことなど、思い出話に花が咲きました。長年、岡山の経済界を率いてこられた経験に裏打ちされた言葉には、やはり大きな重みがありました。
そして翌8月10日は、両備グループ代表であり、一般財団法人地域公共交通総合研究所の代表理事・理事長を務める小嶋光信会長のお話を拝聴しました。
小嶋会長は、地方鉄道、路線バス、旅客船、タクシーなど、数多くの交通事業の再生を現場で指揮してこられた「地域公共交通再生の実践者」です。廃線の危機にあった南海貴志川線を引き継いだ和歌山電鐵の再生では、三毛猫の「たま駅長」を誕生させ、鉄道を地域全体の魅力へ変えたことでも広く知られています。
今回の講演で強く訴えられたのは、地域公共交通を単なる「赤字路線」として扱ってはならないということでした。
いま交通事業の現場では、利用者の減少に加え、運転者や整備士の不足、車両や船舶の老朽化、燃料費や資材価格の上昇が重なっています。乗りたい人がいるにもかかわらず、担い手や設備が足りず、運行を続けられない「供給制約」の段階に入っています。
だからこそ、赤字が発生してから補助金で穴埋めするのではなく、公共交通を地域の暮らしを支える社会資本として捉え、将来を見通して投資する必要があります。
高齢者が病院へ行く。子どもたちが学校へ通う。住民が買い物や仕事へ出かける。観光客が地域を巡る。災害時には人や物を運ぶ。その移動を保障することが、地域公共交通の役割です。
小嶋会長は、車両や施設などを公共が支え、民間が運行とサービス向上を担う「公設民営」の必要性を長年訴えてこられました。さらに、設備への投資だけではなく、運転者、船員、整備士など、地域交通を担う人への投資が欠かせないことも強調されました。
交通を守ることだけが目的なのではありません。交通によって、地域の暮らしと未来を守る。小嶋会長のお話から、その強い信念と、長年現場で交通再生に取り組んでこられた方ならではの迫力を感じました。
講演後は小嶋会長を囲み、山陽新聞と日本経済新聞の記者の皆さんらとランチをご一緒しました。講演会場とはまた違った和やかな雰囲気の中で、公共交通や岡山の将来について話が弾みました。
昨日は岡﨑彬前会頭、本日は小嶋光信会長。お二人とも岡山を代表する経済人であり、長年にわたって地域の発展に尽くしてこられた大先輩です。それにしても、お二人のこのお元気なパワーは、一体どこから湧いてくるのでしょうか。大いに学び、大いに刺激を受けた二日間でした。
お二人を前にしては、私はまだまだ雑巾がけのジイジでした(笑)。
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